エアーかおるの歩み

はじめに

岐阜県安八町に本社を置く浅野撚糸は、繊維産業の製造拠点が海外にシフトし、一時期業績が低迷していたが、特殊撚糸工法を用いたタオル『エアーかおる』が大ヒットし、最終製品を生み出して業績回復を果たした事例として、多くのメディアに取り上げられています。特殊撚糸工法は、繊維素材にやわらかさ、肌触りの良さ、ボリューム感、軽量性という感性や、吸水性、速乾性等の機能性を高いレベルで持たせることができ、さらに、その感性や機能が長期間持続します。

リピーターに根強い“エアーかおる”

『エアーかおる』は、三重県津市のおぼろタオル株式会社と共同で開発、2007年6月に販売を開始しました。価格は、フェイスタオルで1枚1,000円とタオルとしては高価格帯であるにもかかわらず、百貨店や総合スーパー、カタログ販売などの販路開拓に成功し、数多くのリピーターから支持を得ています。 大手テレビ通販で、3時間弱の時間内に約1億2,000万円分もの注文が入るなどの実績もあります。『エアーかおる』の知名度が高まるとともに、伸縮糸等の特殊糸を生産する複合撚糸技術が高く評価され、大手繊維メーカー及びアパレルメーカーから引き合いが多いです。

特殊撚糸工法

撚糸とは紡績業における一つの工程であり、複数の糸をねじり合わせることをいいます。紡績メーカーなどから供給される糸は、強度がなく、太さが不均等であるため、不安定な上、繊維生地に加工する時、糸切れが起こりやすく加工がしにくいのです。 強度を高め、太さを均等にするなど、糸を安定させて繊維生地を加工しやすくする工程が撚糸加工です。

栄光からどん底へ

岐阜・尾州地域は木曽三川の水資源に恵まれ、昭和に入ると紡績業者は次々と操業を開始しました。紡績業者は、当初は撚糸工程も自社工場内で行っていましたが、昭和30年代より撚糸工程を業務委託する業者が増え、近隣である岐阜県の西濃地域を中心に、撚糸業者が増加し、全盛期には県内に約800軒の撚糸業者が操業していきました。浅野撚糸の創業1967年。業務は紡績の下請けにあたる賃加工が主。地元に工場をもつ大手紡績の下請けとして順調に業容を拡大し、約50社の協力工場を抱え、大手商社、大手メーカーとの取引もあり、撚糸業では全国屈指の規模を誇っていた。1980年代に入ると大手は安い人件費を求めて、東南アジアや中国などに製造拠点を移していった。県内の撚糸業はその打撃を受け、その数は激減。現在、県内には当社を含め20社程度となり、国内加工賃についても、創業当時から物価が向上しているにも関わらず、同額か少し下回っているなど、壊滅的な産業となった。そうした状況のなか、同社は難度の高い撚糸を手がけられるよう、1993年から協力会社とともに、各社合計約10億円の投資額を費やし、最先端設備の導入に力を入れて、技術力を築き上げた結果、ポリウレタンを用いた収縮性のある難度の高い撚糸加工の受注が増加し、2002年度では、過去最高の約7億円を売り上げた。しかし、海外製造の技術力も向上し、2001年には、大口の取引先から「発注は1年後半分、2年後はゼロになる」と通告を受けた。2003年、事業を縮小して、会社を存続させることを決断。同社には借入金がなく自主廃業する選択肢もあったが、協力会社には設備投資をした際の借金が4000万円以上残っている。早期退職を募り20名の社員が去って、10名が残った。

運命の出会い「ミントバール」

以前より取引のあったクラレトレーディングの技術者からミントバール(水溶性糸)が送られてきました。同年11月よりミントバールを使った撚糸工法の開発を開始し、クラレトレーディングとの共同で、2004年に特許を申請、2009年に登録となりました。新しい撚糸工法は、糸の種類や番手、撚糸条件など、いろいろな撚糸加工をしてみると驚くほどの伸縮性が生まれるのです。当初は、メンズスーツや肌着に採用されるなどして、「特殊撚糸」は市場へ投入されていきました。

運命の出会い「おぼろタオル」

「撚糸加工賃の下請けでは受動的生産で、やがて受注は減少するだろう」 この開発を長期的な収入源にするには、自ら最終製品を持つ方法がある。「特殊撚糸」を採用して商品化に取り組んでくれる企業を探したが、簡単には出合うことはできなかった。2005年、たまたま参加した取引銀行の企業マッチングで、もう一つの運命的な出会いが生まれた。当時のおぼろタオル株式会社も、タオルの生産拠点が海外に移転した影響で受注が減少した同じ境遇を持った下請け企業。もともとは、伸縮性のあるタオルを作ろうと、タオルの経糸と横糸に「特殊撚糸」を用いるよう依頼したところ、誤ってパイル糸に織り込まれた。その出来上がったタオルは、ふっくらと柔らかくて、吸水性抜群。こうして『エアーかおる』が誕生した。 その後、4,000枚超の試作を経て、量産化し、岐阜県大垣市役所内の新聞記者クラブにて、プレス発表を行い、2007年6月に販売を開始した。

念願の最終製品で市場化

撚糸業である同社は、最終製品を販売する人材とノウハウがない。同社社長の浅野雅己自らが営業することとなった。このときの経験をこう語る。「このとき営業の辛さと怖さを初めて味わいました。飛び込み営業で、見ず知らずのところへ行って頭を下げるのですが、まずは断られます。関西のタオル屋さんにアポイントが取れて行った時は、先客がいたので『外で待っててくれ』と言われて、立ったまま待つこと1時間。ようやく『どうぞ』と言われて入ったら、『ウチはブランドタオルしか扱わん。これが千円なの?絶対に売れへんな。』と、たった5分程度の立ち話で終わりました。(笑)」 2009年、おぼろタオルとのタオル事業が、経済産業省の新連携事業に認定された。国の支援を受け、パンフレットやPRビデオ、年2回開催される「ギフトショー」に毎回出展し、徐々に認知度が上がっていった。


エアーかおる年表
2003年 クラレと「魔法の撚糸」の研究開始
2004年 クラレとの共同開発により「魔法の撚糸」の発明に成功
2005年10月 銀行主催のビシネスマッチングにておぼろタオルと出会う
岐阜県産業経済振興センターより事業可能性評価委員会「評価A」を認定
2006年1月 おぼろタオルに「魔法の撚糸」を用いたタオルの開発開始
2007年3月 4,000枚の試作を経て、完成したタオルを「エアーかおる」と名付け商標を登録
2007年6月 大垣市役所内の記者クラブにて、プレス発表を行い、6月28日に販売開始
2007年7月 大規模展示会「インターナショナル・ホームファッションフェア」に出展
2007年10月 大手ベビーアパレルである株式会社ファミリアが採用決定
2007年12月 経済産業省よりタオル販売事業を「新連携認定事業」に認定
2008年7月 大規模展示会「ギフテックス」に出展
累計販売数 5万枚突破
2008年8月 最大手テレビ通販「ジュピターショップチャンネル」に採用決定
2008年10月 日本国特許取得、大手雑貨店「東急ハンズ」全店舗採用
累計販売数 10万枚突破
2009年2月 大規模展示会「ギフトショー」に出展
2009年3月 元気なモノ作り中小企業300社「キラリと光るモノ作り」に中小企業庁より認定
2009年5月 累計販売数 20万枚突破
2009年6月 三越通販「定番物語」に採用決定
2009年10月 累計販売数 30万枚突破
2010年4月 大手量販店のイトーヨーカ堂が採用決定
2010年5月 大垣市役所内の新聞記者クラブでプレス発表を行い、「エニータイム」販売開始
2010年6月 累計販売数 40万枚突破
2010年7月 上海事務所開設
2010年8月 上海国際ギフト展日本ブース出展
2010年9月 累計販売数 50万枚突破
2010年10月 楽市楽座APEC国際見本市に出展し、3日間でエニータイムを900枚販売
上海万国博覧会出展
2010年11月 岐阜県知事よりエニータイムが「飛騨・美濃すぐれもの」に認定
2011年2月 日本国特許取得(ループパイル織編物)
2011年6月 中国特許取得
2011年7月 岐阜県活性化ファンド補助事業に採択
2011年12月 累計販売数 100万枚突破
2012年2月 大規模展示会「ギフトショー」に出展(エアーかおるデオ「ナデシコ」発表)
2012年3月 岐阜県観光連盟より岐阜県観光土産品に推奨される
2012年5月 岐阜県清流国体オフィシャルサプライヤーに認定 累計販売枚数40万枚突破
2012年6月 大規模展示会「コスメ東京」に出展
2012年9月 大規模展示会「ギフトショー」に出展(エニータイム「ディープインパクト」発表)
戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に採択
2012年12月 中部科学技術センター振興賞(準グランプリ)表彰
中国南通兆宏特種繊業有限公司設立
2013年1月 累計販売数 150万枚突破
2013年2月 大規模展示会「ギフトショー」に出展(エニータイム「ディープインパクト」発表)
2013年6月 大規模展示会「コスメ東京」に出展(エクスタシー XTC 発表)
2013年8月 累計販売数 180万枚突破
2013年9月 大規模展示会「ギフトショー」に出展(エクスタシー XTC 発表)
第5回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞受賞
小規模事業者活性化補助金 採択
2013年12月 エアーかおる流通枚数累計200万枚突破
2014年2月 日本アトピー協会推奨品認定
2014年4月 文部科学大臣科学技術賞技術部門受賞
2014年10月 エアーかおる流通枚数累計260万枚突破
2014年12月 第28回中日産業技術賞 特別奨励賞受賞
2016年9月 エアーかおる流通枚数累計400万枚突破
2016年12月 素材にオーガニックコットンを採用し、全面リニューアル 流通枚数累計420万枚突破
2017年6月 流通枚数累計500万枚突破